山門をくぐると、正面に庫裏と書院、樹齢300年を越えるソテツの雌雄の古樹をみて、右手に鳳凰が羽を広げるが如くの新客殿、そこをへ向かう左手に納経所、その奥に線錆色の銅板葺きの屋根が印象的な本堂がそびえています。本堂向かいには河内八十八ヶ所十番の大師堂。その左横には名僧・寂賢和尚墓所。その奥に三宝荒神社が構えています。境内の北面には墓所が拡がっています。
本堂の建立時期は不明ですが、江戸中期から後期に立てられたものではないかと推測されます。いたる所にホゾ穴があることから、各所の古材をよせた形跡があります。しかし装飾はかなり手の込んだ細工がみられ、小さな空間にもかかわらず灌頂壇の様式をとっていることから、密教道場としての大きな役割を担ってきた面影を残します。堂中央には護摩壇が置かれ、天上など煤黒く休むことなく祈願を修されてきた歴史を物語ります。
新客殿『施薬殿』は、法隆寺宮大工の技術を引き継ぐ小川三夫棟梁(鵤工舎)の手によって平成17年の秋に落慶されました。法事や講義、寺子屋を開く場としてもっともよく使用される空間で、持仏として、大日如来、不動明王、弘法大師が祀られています。
高蔵寺の立地は県道沿いの平地にあります。山門の階段を3つも上がれば境内に入れます。その面積は市内唯一といっても過言ではない広さを誇ります。境内には花々が咲き、小鳥がさえずり、淨香と桧の香りが芳しくかおります。平野でありながら空の広さと美しさは他では味わえぬ魅力だと誰もが申されます。境内を歩むだけで、心身浄まる密厳仏国土として、日夜、檀信徒と共に加持護念しております。
旧客殿は平成7年の阪神大震災の影響で大きく傾き、診査の結果、10年内に改修もしくは新築が望ましいという判断が下されました。これをきっかけに『高蔵寺伽藍改修工事』に着手、本堂の移転、新客殿建立など、境内は宮大工の手によって古式に則ったカタチを復興することになりました。