ここに到るまで何が大変だったかと言えばもちろん寄付のお願いですが、それ以外に挙げるとすれば、やはり「片づけ」です。「あまり荷物がないから」と余裕を持っていましたが、いざフタを開けてみると…大変でした。捨てられない…また使うかもしれないという気持ちに揺れながら約3ヶ月を要しました。
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建物に感謝を捧げ、全てに対し供養と解体時の工事安全の祈願。
約160年…建立して下さった先師、先祖、そして職人への感謝も丁重に行ないました。 |
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今から約100年前の水害跡地域とっては大切な史跡。
壁の高い所に水に浸かった跡が残っているのです。 この水位を記録し、水跡を切抜き新客殿に埋め込むということになりました。 しかしひと口に切り取ると言っても至難の技。 モロく重い漆喰壁に大苦戦。埃まみれになり、その重量には身の危険を感じるほどの驚異でした。 |
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そしていよいよ解体工事が始まりました。
凄まじい轟音と埃を立てて一気に進行。さすかに胸の痛むシーンでした。 ありがとう…今までの感謝と共に「いよいよ」という覚悟でした。 |
本堂を移動し、南向きに設置するためにまずはその場所の地鎮祭を行いました。本堂の地鎮祭ですから、境内全体の地鎮祭でもあるわけで、この事業でもっとも重要な法要と言っても過言はありません。
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法縁の和尚さま達の助法と有縁の方々のご参席を頂き、静かに厳修しました。
午後からは早速基礎工事が始まりました。 |
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本堂の移動準備が着々と同時に進行しているので、一刻を競う工事です。
地鎮祭を修した本堂の新基礎にグリ石というコブシ2つ分位の石を縦に木槌で叩きながら敷き詰めていきます。 大きさを揃え、コツコツ敷く作業は見た目とは違い、大変ハード。縦に置くことで強度が増すそうで、この後、新客殿でも同じ作業を行います。 約2メートル近い深さの盤石な基礎が見事に完成しました。 |
家を引く職人は4名。ベテランが息を合わせます。その手つきは慣れたもので、絶対の自信と信頼によって阿吽で進行します。
「山坂であっても、ワシらなら動かすことは可能だ」と平然と笑う。
床と縁の下に穴をあけ、鉄筋を通して足場を固めていきます。ジワジワとジャッキアップをし、線路を引いてゆっくり動かします。
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「よっしゃ、上げてくれ!!」の号令でジワッと本堂が浮き上がりました。
線路に丸い棒をかまし、カンカンと木槌で微調整しながら、ゆっくりと前へ進み出す。 |
トラックのクリンチをジワジワ巻いて徐々に加速。すべてが手作業。
熟練された職人さん達の大声の中、ギギギ〜ッと音を立てて移動しました。見ている側の緊張も半端ではありません。
直進後、今度は西向きから南向きへ方向転換。そしてバックでゆっくりと新しい位置へ向かいます。