2018/11/30『さよなら、田中さん』

Byyomairi

2018/11/30『さよなら、田中さん』

この時期、年に1度、とあるお寺の法要のお手伝いに出かけています。もう10年以上通っています。そこには全国から和尚さんが集まってきます。中には年に1度しか会わない人もいます。
 
私はそのお寺で「奉行」という法要の流れを見ながら、全員をまとめる役割を担っています。その時、ご一緒する先輩の大太鼓と私の般若心経を合わせるという大役はあって、それは責任重大で毎年ドキドキします。
 
今年も無事、上手くいってホッとしながら控え室でその先輩和尚さんにご挨拶をしました。この方は物静かで無駄なことはほとんど話されません。しかし、今回はニコッと微笑んで「良かったね、上手くいきました。そうそう、さいきん読書してますか?」と訊かれたので、「買うには買うんですけど……なかなか読めてません」と答えました。
 
ぜひね、騙されたと思って『さよなら、田中さん』って小説を読んでみて下さい。母の見舞いの合間に読んだんだけど素晴らしかったんです。どうやら、中学生の著作みたいなんです。絶対、アナタには沁みるから……と薦めて下さいました。
 
意外な方から、意外なオススメが嬉しくて、さっそく読みました。なんとも言えぬリズム感と視点でどんどん状況が広がる不思議。いつも私が心がけている「法話は言葉の映写機」の文章バージョン。クスッと笑い、絶妙な台詞に頷き、そして細やかな出来事に涙しました。
 
理屈抜きに心を奪われ、読み終えた時には「花ちゃんのお母さん」と「担任の木戸先生」の名言を書き出していました。あえて内容にはふれません。素直な気持ちでぜひ読んでみてください。劇中に登場する『ドナドナ』がぐるぐる響く心地よい余韻に慕っています。
 
幼き感性に50歳のおっさんが心を揺さぶられてしまいました。固執した観念やドロドロとした偏見はそろそろ洗い流して、どんどん新しい才能に触れたいと心新たです。ご紹介してくれた先輩和尚さんに心から感謝です。
 
いつか、この本の内容から法話が出来たらステキですね。